何が起きたのか
2026年6月9日、AnthropicはMythosクラスのモデルとして初めて一般公開するClaude Fable 5をリリースしました。それまでこのクラスのモデル(4月にProject Glasswingで提供されたClaude Mythos Previewなど)は、脆弱性を見つけて悪用できる能力の高さから、限られたサイバー防御者だけが利用できました。
同日、同じモデルで一部の安全策を外したClaude Mythos 5も公開。対象はGlasswingのパートナーと、後に選ばれた生命科学の研究者に限られました。
しかし3日後、両モデルへのアクセスは米国政府の命令により停止されます。
Fable 5の特徴
- Anthropicによると、テストしたほぼすべてのベンチマークで最高水準。タスクが長く複雑になるほど差が広がる。
- 紹介された例:Stripeは5,000万行のRubyコードベースの移行を1日で完了したと報告。スクリーンショットだけで「ポケットモンスター ファイアレッド」をクリア。
- 価格:入力100万トークンあたり10ドル、出力50ドルで、Mythos Previewの半額以下。
安全策
安全に公開するため、Anthropicは攻撃的なサイバーセキュリティ、生物・化学、蒸留(モデルのコピー)に関する要求を検知する分類器を導入しました。該当する場合はClaude Opus 4.8が自動的に回答し、ユーザーにも通知されます。同社によると、95%以上のセッションではこの切り替えは起きません。
また、Mythosクラスのモデルの通信には30日間の保存が義務化されました。用途は安全対策に限られ、学習には使われません。
6月12日の停止
米東部時間6月12日(金)午後5時21分(日本時間6月13日午前6時21分)、Anthropicは国家安全保障を理由とする米政府の輸出管理指令を受け取りました。指令は、米国内外を問わず、Anthropicの外国籍社員を含むすべての外国人によるFable 5とMythos 5へのアクセスを禁じるものでした。
国籍をリアルタイムで判別できないため、同社は全顧客に対して両モデルを停止しました。ほかのモデルには影響ありませんでした。
Anthropicによると指令に詳細はなく、政府がFable 5のジェイルブレイクの可能性を把握したと理解しているとのことです。同社はその手法を検証し、見つかったのは他の公開モデルでも発見できる、既知で単純な脆弱性が少数だったと説明。指令には従いつつも、政府が危険な提供を止められるべきだとしたうえで、その手続きは「透明で公正、明確、かつ技術的事実に基づくべきだ」と公に異議を唱えました。
再開
2026年7月1日、AnthropicはFable 5とMythos 5の提供を再開したと発表しました。
企業にとっての意味
- ベンダーリスクは現実のもの:規制判断でモデルが突然使えなくなることがある。代替モデルを設定しておく。
- 重要な業務を単一モデルに依存させない。
- 高度なAIの規制は輸出管理という形でも進んでおり、日本やブラジルなど米国外の企業にも影響し得る。
出典
- Anthropic「Claude Fable 5 and Claude Mythos 5」(2026年6月9日):https://www.anthropic.com/news/claude-fable-5-mythos-5
- Anthropic、指令に関する声明:https://www.anthropic.com/news/fable-mythos-access
- CNBC(2026年6月12日):https://www.cnbc.com/2026/06/12/anthropic-disables-access-to-fable-5-and-mythos-5-to-comply-with-government-directive.html
- NBC News:https://www.nbcnews.com/tech/tech-news/anthropic-suspends-new-ai-models-fable-mythos-government-directive-rcna349901
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